2014年09月09日

「おちくぼ」をつれづれにまとめる(5)

集合写真.JPG

■ますますつれづれに

・自作の説明をダラダラするのは「言いたいことは作品で語れ」という考え方の人には、
 あまり気分がよくないかもしれません。
 でも、それはお客さんに「一回見てすべてわかってください」と言っているのと一緒。
 映画や小説ならともかく、演劇ではつらいんじゃないだろうか。

・せっかくチケットを買って見にきてくれたお客さんに、
 より得した気分になってもらうべく、こういうことも積極的に書いていきたいのです。
 遠藤は昔から映画本編よりもメイキングのほうが好きだったりしますし。

・アンケートで「ダブルヒロイン」という言葉が目立ちました。
 昔からある言葉ですが、やっぱり『アナと雪の女王』の影響が強いのではないかと。
 ジブリでも『思い出のマーニー』をやってますし、
 もしかしたらダブルヒロインがはやっているのかもしれません。

・ダブルヒロインと言えば、エンプロの第二回公演は女性二人芝居。
 『コミックブックアクトレス』は再演したい作品のひとつです。

・【Re:z】は「リピートZOO」の略称。
 繰り返しZOOに来ていただけることを願って命名されたとのことですが、
 お客さんにはまた見に来たいと思ってもらえる作品ができたんでしょうか。
 どうでしょうか。

・あと、【Re:z】は次回から道外劇団が対象になるようです。
 道内で活動している集団としては残念ですが、
 いまは今年この公演ができて本当によかったと思っています。

・配役は紆余曲折ありすぎて、経緯を忘れてしまいました。
 いまから思えば、いまの座組みでしか有り得ないお話になったと思います。

・北の方は男性の役者、しかも怖い人という条件で梅津学くんにお願いしました。
 突飛に見えたかもしれませんが、作戦どおりうまくハマったと思います。

・少納言は寺地ユイさんにお願いしました。
 今回は彼女だけエンプロ初めてだったんですが、
 予想以上になじんでくれて助かりました。

・帯刀役の深浦佑太くんの宣伝ツイートが毎度おもしろかったです。
 毎日毎日、宣伝文句として印象深く、微妙に説明になっている言い回しが印象に残りました。


 見事です。

・今回の脚本のプラスポイントは、各登場人物の「その後」を書けたことです。
 直接的には書かれていなくても、各人のその後の人生を
 しっかり匂わすことが出来たと思っています。

・少なくない子供のお客さんから「おもしろかった」との声をいただきました。
 確認できる最年少は4歳です。(2014/9/10時点)

・子供向けに作ったつもりはないので予想外でしたが、嬉しい評価です。
 1時間45分も飽きずに見てもらえたのは自信になります。

・舞台美術は川崎舞さんにお願いしました。
 エンプロは基本的に一幕芝居ばかりだったので、
 今回のような抽象要素のある舞台は初めてでした。
 ぐるぐる不安定さを感じさせる舞台は過去のエンプロ公演でも屈指の出来だったと思います。

・想像をかきたてる舞台と、こちらもエンプロでは珍しい鮮やかな照明は、
 お子様にとっても楽しめる要素になっていたと思われます。

・原作のある話はエンプロでは初めてですが、
 遠藤は中学校の学校祭のときに『オペラ座の怪人』『いまを生きる』、
 高校では『きけ、わだつみのこえ』の脚本をやらせていただいてました。
 結構、やってますね。

・エンプロでは毎回「打ち上げ花火上等」の精神で公演しています。
 それで10年以上やってこれたのは奇跡に近いと思います。 
 いまのところ、今後の予定は未定です。いったい、どうなることやら。


そろそろ気が済んできたので、このへんで終わりにしたいと思います。

この公演にかかわってくれた皆様、ほんとうにありがとうございました。

そして、ここまでブログを読んでくれた皆様、ご苦労様です。

また機会ありましたらどうぞよろしくお願いします。

※装置と一緒に記念撮影。

(おわり)
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2014年09月08日

「おちくぼ」をつれづれにまとめる(4)

ふたり.JPG

・改編その3/うそくぼ問題とその周辺

原作「落窪物語」の落窪姫はウソをつきません。
このあたりは原作好きの方のリアクションが気になる変更です。
「落窪姫はそんな人じゃないよ!」というツッコミが入るのではないかと、
びくびくしながら変えてしまいました。

彼女のウソでドタバタ感が増すので、
「物語の推進力を落とさない」という機能的な役割も重要なんですが、
真の狙いは「落窪の成長と葛藤」を描くことです。

落窪姫は本来頭のいい女性ですが、
幼少から何でも世話してくれる優秀な侍女・阿漕が、
彼女の成長を妨げてしまいます。

阿漕は幼い頃から良かれと思って何から何まで落窪の世話をします。
ますます落窪は世間知らずになっていきます。
自分が頼りない存在でいなければいけないような気もしてきます。

落窪自身も居心地の悪い状況にあるのは気づいているけれど、
どうしていいかまではわからない。
成長していくにつれてその葛藤は深くなります。

そのため、お互いがお互いのことを大好きなはずなのに、
ふたりの関係はギクシャクしてしまいます。

今回の「おちくぼ」では、侍女の阿漕のいるときといないときで、
落窪姫の言動が変わります。

阿漕の前では、単にネガティブで頼りない存在なのに、
北の方の前では機転を利かせて危機を乗り越えたりしています。
ウソをつくのは彼女の変化(=成長)のひとつです。

本作では、一時的に落窪姫と阿漕の立場が入れ替わることで、
単に依存する関係から対等に近い関係になり、エンディングを迎えます。

この二人の関係の変化は遠藤がしっかり書きたかった部分です。
うまく伝わってるといいのですけども。

ちなみに、彼女たちの関係は、
道頼と帯刀のそれに近づいていくという見方もアリです。
身分の差があっても二人は親友ですから。


・・・・・・


これらの改編は、後から見ると「たかがそんなもの」という感じもしますが、
それは後から見たから言えること。

小難しく見せないのも技術だったりします。
こういうのは演劇を見ている最中の観客には伝わらない(伝わった時点で失敗作)ので、
たまにはアピールしておくのもいいかと思って書いてみました。

※友情への道のりは険しい(こともある)。

(つづく)
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2014年09月07日

「おちくぼ」をつれづれにまとめる(3)

オニーズ.JPG

・改編その2/誰を登場させるのか問題

前回書いたように、四の君は名前だけで中身は三の君。
本当の四の君は登場していません。
(末の娘だけが未婚のほうがわかりやすいですからね)

原作は文学ですからいくらでも登場人物が増やせるのに対し、
演劇は無尽蔵というわけにはいきません。
役者さんにオファーをかけるのも大変です。

これを妥協というなかれ。

がんばって原作どおりに登場人物が出てきたところで、
それを2時間で理解しなきゃいけないお客さんが困ってしまうのは、
火を見るよりあきらかです。

原作に忠実かつお客さんのノイズにならない適度な変更、
楽しんでもらうためのベストバランスを見つけなければいけません。

「おちくぼ」では、原作に登場する重要人物が結構出てきません。
先ほどの四の君もそうですが、いちばん大きいのは中納言。
つまり、落窪の父です。

気弱で病弱、もうろくしていて北の方の尻に敷かれているというのは
「おちくぼ」で語られているとおりのキャラクターです。

作中でさんざん中納言家と言っているのに、主である中納言本人は出てこない。
このへんは悩んだところですが、中納言は気が弱いので悪に徹することが出来ない人です。
対立構造をはっきりさせるためカットしました。

「おちくぼ」内では語られてませんが、中納言は引越し予定の二条院に
下見に行っているという裏設定をつけました。

一方で、楽太郎くんが演じた和泉からの使者(いずみからのししゃ)は、
原作には登場してないのに「おちくぼ」に登場します。

彼は陰ながら落窪たちを助けるという意味で
原作の三郎君のポジションだったのですが、
さすがに楽太郎くんに年端も行かぬ小僧を演じてもらうわけにも行かず、
近い役割のオリジナルキャラクターをお願いしました。

オリジナルとはいえ、原作でも和泉の叔母からたくさん届け物がありますし、
原作ファンでも彼が登場するのに違和感を持った人は少ないはずです。

それに、部外者というのは異世界モノを書くのに大事な役割です。
登場人物間に情報格差をつけることで、説明台詞を自然に書くという狙いもあります。

あと、彼には「行平」という名前をつけていたんですが、
みんな和泉と呼んでいて定着していたので、
この名前が日の目を見ることはありませんでした。残念。

※出番を待つ鬼ーズ。(原作にはこんなシーンありません)

(つづく)
posted by エンプロ at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | おちくぼ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月05日

「おちくぼ」をつれづれにまとめる(2)

見返り四の君.JPG

■原作「落窪物語」との関係について

今回、原作のある話を初めて上演しました。

いくらわかりやすいシンデレラの話とはいえ、
長編の古典文学をそのまま演劇にできるはずはなく、
いろいろと脚色しております。

一番大きいのは時間の問題。

文学ではいくらでも読者の時間を気にせず書き続けることが出来ますが、
演劇ではどうがんばっても2時間。
(エンタメ作品として小さめの小屋でやる場合)

鴻上尚史さんが著書で、戯曲を「時間のパズルゲーム」と称しているとおり、
創作能力より編集能力が重要なケースがあります。
今回のように長めの原作があるパターンが一番わかりやすいですよね。

原作のある作品をわたしたちエンプロがやる場合、
この「2時間以内」のほかにもそれなりに高いハードルを越えねばなりません。

・平安時代の世界の話をわかりやすく書く。
・原作のファンの方々に気を悪くさせない。
・遠藤が描きたいものをきちんと描く。
・コメディである。

上に書いた条件をクリアするために、工夫の限りをつくしたつもりなので、
具体的に何をしたのかちょっとだけ書いておきます。

・改編その1/四の君と三の君の合体

「おちくぼ」でも語られているとおり、中納言家には四人の娘がいます。

原作「落窪物語」で描かれるのは三の君と四の君(三女と四女。そのまんま)。
本来、蔵人が言い寄るのは三の君のほうでした。

この三の君は「おちくぼ」に出てくる四の君と同様性格が悪い。
原作のお話後半では蔵人に捨てられてしまいます。

では、原作の四の君はどんな人だったのかというと、
中納言家では数少ない良心的な人(単に幼いだけとも言えますが)で、
落窪に対しても同情的な人物でした。

この四の君の名前だけ残し、性格を三の君のものに入れ替えました。
北の方と落窪の対立構造をはっきりさせ、
蔵人と道頼が同じ女を取り合っているように見せかけることで、
物語の推進力を維持しようとしたわけです。

ちなみにプロット段階では、役者の後藤貴子に、
「大君」「中の君」「三の君」「四の君」の一人四役をやってもらって、
ドタバタに拍車をかけてもらうというプランもあったんですが、
書くほうもやるほうも見るほうも混乱するだろうということで、
案の定、ボツになりました。

ふたを開けてみれば、四の君ひとりで十分輝いていたので、
ヘタな奇策に走らなくてよかったと思っています。

中納言家がおそ松くんみたいになるのも見たかったんですけどね。

※見返り四の君。
posted by エンプロ at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | おちくぼ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月04日

「おちくぼ」をつれづれにまとめる(1)

OP.JPG

無事に「おちくぼ」が終了しました。

ご来場いただいたみなさま、関係者のみなさま、
本当にどうもありがとうございました。

総括というほどたいしたものではありませんが、
9月に入りいろいろ考える余裕も出てきましたので、
つれづれにあげていくことでまとめとしたいと思います。

という建前のもと、もうすこし本作の余韻にひたってしまおうという魂胆です。

「ひとつ終わったら間をおかず次の作品!」というのが
表現者としては健全なのかもしれませんが、
最後まで本作を堪能してから今後のことを考えたいと思います。



■タイトルについて

けっこう思い切ったタイトルをつけました。
アンケートに指摘がありましたが、
「おちくぼ!」だったら萌えアニメっぽくてよかったと思います。

ネガティブな落窪、しっかり者の阿漕、色好み道頼、
気苦労の多い帯刀、気位高い蔵人、ボケ老人典薬輔、
お人好し和泉使者、マイペース少納言、
わがまま四の君、恐怖の北の方…。

今からでも誰か絵の得意な人が四コママンガにしたら
非常によいのではないかと思っています。

実際、萌えアニメの要素はけっこう意識しており、
登場人物を全員可能な限りかわいらしく書くというのは
今回の重要なテーマのひとつでした。

それでも「おちくぼ!」にしなかったのは、理由があります。
「!」をつけると三谷幸喜さんの脚本っぽくなってしまうからです。
「新撰組!」とか「オケピ!」とか。

エンプロ当初から、三谷作品の書き方を参考にして作っている部分も多いので、
遠藤の独自色を出していくために「!」をつけるわけには行かなかったのです。
心意気の問題です。

結果、あまりコメディっぽいタイトルではなくなりましたが、
つかみどころがないのに落ち着きのある語感が
自分にはあっているように思いました。

(つづく)
posted by エンプロ at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | おちくぼ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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