◎『ゴーストライター珠美』(脚本・遠藤雷太)
木村 京子:後藤貴子
南 珠美:山下カーリー
充名あい:大沼理子
南 珠美:山下カーリー
充名あい:大沼理子
この「聞き耳カフェ」は一見オムニバス公演ですが、単に短編を並べているだけではありません。
公演全体としても起承転結を考えて構成しております。
「珠美」はイントロダクション(導入部)という位置づけですが、聞き耳カフェでは、このポジションを考えるのがいちばん難しい。
なぜならただの導入部で済まない、公演全体の総括が求められるからです。
メインのホールスタッフである木村京子は、後藤貴子が演じました。
彼女は「その2」から3年連続で同じ役で出演しています。
バツイチ子持ち、父親失踪歴アリ(その後再会)という人生の紆余曲折を存分に味わった彼女です。
ちなみに、その3に登場した店長は、ある日突然、置手紙を残して失踪したという裏設定があり、その後は、もともと事実上の店長だった彼女がこの店を切り盛りしています(オーナーは別にいます)。
まさに苦労体質。
また、タイトルにある珠美を演じたのは山下カーリーさん。「寅さん」っぽい感じをリクエストしました。
※フーテンだろうか?
態度は寅さんでも、立場的には人生ナメ切っている半ニート(親と同居)というところがなるほど現代のお話です。
ふたりは同級生なので同じ年という設定なんですが、あまりに違う暮らしぶりに、人生の奥深さを感じずにはいられません。
そういうふたりの対比だったり、珠美が実は「犬犬ファンタジア」のファンだったり、締め切りに追われていたり(怖い先輩に脅されてとあるサイトのライターをギャラなしで書いています)、もうひとりのホールスタッフである充名との確執だったりと、こまごました「お話が作れそうな設定」はあったんですが、そういうのを全部ふっとばして、最終的には街が石化しました。笑
※一時は確執を期待されたふたり。
もちろん、これは二話目の「ピックアップ生首。」から出てきたアイディアです。
わざわざこういう展開にしたのは、もちろん理由があります。
一幕劇の基本的な技術として、「外の世界を想像させることで話に深みを持たせる」というのがひとつ。
語られている世界が、喫茶店のひとつのテーブルから街全体に広がるというのはお話のラストとして見栄えがいいだろうと考えました。
あ、一応話の中ではホテルの客が石化したということになっていますが、ゾンビの発生みたいなもので三人がホテルについたころには、街…すくなくとも豊平区全体に石化が広がってるイメージです。
また、フィクションラインを上げることで二話目の荒唐無稽感を薄めようというのも小さくない理由です。
もしかしたら、さんざん迷ったくせに「俺のほうが荒唐無稽だぞ!」と張り合いたかったのかもしれません。
ウソから出たマコトというオチはわりと古典的な感じもしますが、聞き耳カフェの空間ではずいぶん新鮮です。
「聞き耳カフェ」というリアルとフィクションの境界線をぼかしている演劇です。
いろんなバランスが考えられますが、今回は全体的に「演劇より」のバランスだったので、このくらいしなきゃ収まらないなと思ったのでした。
これで、「聞き耳カフェ その4」のふりかえりは以上です。
今回感じたのは、「能力はあるのにプライベート(主に仕事)が忙しくなかなか演劇にかかわれない人」に参加してもらうには、ちょうどいい企画だったということです。
また、機会がありましたら、必ず楽しんでいただけるメンバーで上演したいと思います。
その際はどうぞよろしくお願いします。
さて、次はようやく『雨夜の喜劇』を振り返ります。まだ何を書くか決めていません。
今月中に振り返るのはちょっと難しくなってきました。
さて、何を書こうかしら。何か書いてほしいことなどあれば、連絡ください。笑