2015年12月24日

エンプロ、2015年をふりかえる(11)


すっかり夏も過ぎ、秋も過ぎ、いまや年の瀬。

とりあえず役者さん方の更新がエンプロの忘年会に間に合ってほっとしています。

ラストは過去最長です。なにせ人数が多いので。

どうぞ覚悟してお付き合いくださいませ。

……

書いた人が語るのもなんですが、『雨夜の喜劇』は「ウェルメイド」の喜劇です。

個人技よりもチームの連携が優先され、不自然に目立とうとする人がいれば、とたんに作品世界は崩壊します。


しかし、そんななかでも個人技を求められる人たちがいるのです。

いくらおもしろい構成を作っても、そこそこの尺のお話ですから、どうしても中だるみしてしまう恐れがあります。

そんなときに力を発揮するのが、これからご紹介する「チーム・お隣さん」です。


彼ら兄弟は、状況をほとんど説明されず、その善意ゆえに片桐家の泥沼に巻き込まれていく役割です。

リアクションを一歩間違えると作品崩壊奈落の底、それでもあえて足を踏み出す命知らずの冒険家。

実力伯仲、出番は少な目、濃厚すぎる存在感。


それが本作での明石兄弟×2なのです(ダブルキャスト)。

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西軍

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東軍

詳しい方なら、「出番が少ない=実力の劣る役者」でないことは一目瞭然でしょう。
実際、この4人だけで2時間芝居を作っても、問題なく見ごたえある作品になるでしょう。


どんな設定の話にしましょうか。「地獄」とかおもしろいんじゃないでしょうか。

鬼三人(黒鬼・塚本、青鬼・山崎、赤鬼・櫻井)に囲まれて絶体絶命の亡者(村上)という芝居。
絵が浮かびます。

鬼は昔のコントみたいな全身タイツではなくて、黒スーツにワンポイントで各色の入った何かでいいように思います。

拷問具も個性に合わせて持たせたいですね。

地獄の世界観がうまく作れたら、4人で3時間芝居くらいいけるような気がしないでもありません。
ただ、私が書くことはないと思うので、世の脚本家のみなさまにオススメしておきます。

っていうか、絶体絶命の亡者って生きてるのか死んでるのかわかんないですね。


というわけで。まずは亡者…じゃなくて村上義典くんです。

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あらためて。

彼が演じた赤石良太は、仲良し兄弟の兄、真面目で不器用な警察官。

シチュエーションコメディでは「おいしい」キャラクターです。

村上くんがいい役者さんであるということは、すでに聞き耳カフェの記事でも書いています。

心配なことと言えば、出番が少なくて役者として退屈なんじゃないかということくらい。

しかし、そんな演出側の心配を彼はあっさり覆してくれました。

村上くんの演じる良太は、とにかく「重い」「暗い」「テンポが悪い」。

なのに、なぜか成立している。しかも稽古場で爆笑を取っている。

最初のうちは、演出である遠藤も何が起こったのかさっぱりわかりませんでした。

脚本家の解釈が必ずしも正解ではないことを認めるまで、それほど時間はかかりませんでした。

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こんな感じで登場して

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こう。

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そして涙もろい。

与えられたセリフは同じでも、解釈しだいでいくらでも創造的な仕事ができる。
村上くんの演技は明らかに「新手」でした。

こういうことがあるので、演劇は面白いと思わせてくれました。感謝。


続いては、青鬼…じゃなくて山崎孝宏くんです。

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あらためて兄。

山崎くんにも、赤石良太を演じていただきました。

短編含めエンプロ5作品目。慣れているはずですし、実力も十分ですし、役柄も合っているしで何の心配もなくおまかせするつもりでした。

しかし、前の村上くんのとばっちりをマトモに受けてしまったようで、役作りにはかなり苦労していました。

山崎くんの持ち味は「軽い」「明るい」「テンポがいい」です。そうです。村上くんと真逆。

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そわそわ。

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瞬時に動揺。

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異変に気づく0.1秒前。

ふたりとも、お互いの演技プランを見たとき、かなり驚いたようです。そりゃそうだ。

山崎くんのほうが初演の良太のキャラクターに近く、村上くんのプランが新鮮に見えてしまうぶん、不利だったと思います。
即興組合さんの本番で稽古参加が少し遅れたことも影響したはずです。

試行錯誤の結果、山崎くんの良太は、真面目で気立てよく憎めない好青年として演じられました。

いわゆる「おまわりさん」という呼び方が似合う感じです。ちなみに村上くんの警察は明らかに事務方の人でした。

軽快な山崎くんのいる回と、重厚(?)な村上くんのいる回では、上演時間が2〜3分違うはずです。笑

心配してなかったぶん、あまりフォローができず申し訳なかったのですが、きっちり役割をこなしていただきました。感謝。

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好青年。

なお、山崎くんが地獄の鬼役だったら、拷問具は注射器でお願いしたいです。
マッドサイエンティスト系の鬼です。


お次は弟ふたりです。まずは、こちらの黒鬼…じゃなくて塚本雄介くんです。

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あらためて。

エンプロとはお付き合いの長い役者さんです。その歴史は別の記事でも話題になっているほどです。

「雨夜」における赤石道雄は、兄よりもさらに状況のわかっていない人です。ほぼ他人です。

しかも出番があまり多くないので、ただ自然に演じているだけでは存在が埋もれてしまいます。

塚本くんはそういうとき、特に力を発揮する役者です。

出てきただけで場の雰囲気が変わる独特の存在感。違和感。

野球にたとえるなら、ノーアウト満塁の大ピンチというときにこそ、マウンドをまかせたくなるような存在です。

「雨夜」における塚本くんといえば、「おやしろさまのものなのです!」です(正確な表現は違うかも)。

大した前知識もないのに、他人のスマートフォンを自分のものだと主張しなければならない状況で、道雄がとっさに口走ったのがこの言葉です。

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おやしろさま、その瞬間。

塚本くんは、この「おやしろさま」から始まる、脚本にすれば5〜6行くらいの長台詞を舞台のど真ん中で高らかに謳いあげるのです。

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独壇場。

いかにも思いつきで話しているような内容ですし脚本にも書いていませんが、このセリフはアドリブではありません。稽古場で幾度となく反復され、磨かれた「おやしろさま」なのです。

混沌ぶりがおもしろかったので、演出としてオッケーを出しつつ、詳しい意味も文脈も正直わかっていませんでした。

たぶん聞けば教えてくれるんでしょうけども、それはそれで負けた気がしてしまうので、スルーしました。

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言ってやった。

お客さんは温かく見守ってくれたと思います。稽古場の共演者もそうでした。
ほんとうによかったと思います。

冒頭に書いたように、複雑な構成勝負のこの作品で、こういうことをするのは絶妙なバランス感覚が必要です。

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バランス。

その点、塚本くんは見事にクリアしてくれました。感謝。

もし、塚本くんが地獄の鬼役だったら、拷問具はダーツ(鉄製)でお願いしたいです。ジュラルミンケースに入れて持ち歩き、気に入らない亡者に投げつけるイメージです。


最後は赤鬼…じゃなくて櫻井保一くんです。

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パンダといっしょに。

エンプロ初出演です。前から好きな役者さんではあったんですが、所属されているyhsは公演間隔が短いのでなかなかお声がけするタイミングが合いませんでした。

一般的に「いい演技とは何か」と聞かれると、「その役になりきる」ことだと言う人が多いかもしれません。

しかし、それは正解の半分です。
いい演技とは、「その役になりきる」と同時に「段取りを完璧にこなす」ことです。

役になりきるだけでは、生き生きとしたセリフは言えても、立ち位置を間違えて照明にあたらなかったり、装置につまづいて壊してしまったり、ほかの役者との絡みで怪我をさせてしまいます。
つまり、使えません。

迫真の演技をしながらも、決められたことを完璧にこなさなければいけないのが役者なのです。

印象的だったのは、櫻井くん演じる道雄に、葵が抱きつくシーンです。

このとき、道雄と葵は「赤の他人」ですが、葵は周囲の人に「道雄とは恋人」であることをアピールしたいという無茶なシーンです。

なんとしても道雄に抱きつきたい葵役の長麻美は、両腕を大きく左右に広げ、体を棒のようにまっすぐにして倒れかかるというプランで臨みます。

道雄が支えなければ、葵は棒のまま顔から床に激突してしまうので、受け止めざるをえないという作戦です。

とてもコミカルでおもしろいプランですが、相反して危険なシーンでもあります。

彼女は、まっすぐに倒れるほどおもしろいことがわかっているので、多少危険な角度になっても「まっすぐ」でいようすることが予想されるからです。

櫻井くん演じる道雄は、そのナガが「まったく怖くない」と言うほど、しっかり安全に受け止めました。

こういうことは単なる経験値だけではなく、ちゃんといろんな現場で役者としての「徳」を積んでいるからできることだと思います。

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信頼関係に基づくまっすぐな姿勢。体と床との角度にも注目。

もうひとつ、「雨夜」における櫻井くんの大仕事といえば、夕矢役の楽太郎くんにアドリブをさせたことです。

いい役者は、多少場が混乱してもなんとかする自信を持っています。

本番中にあえて豪快なすべり芸を見せることで、稽古ですらほとんどアドリブをしない楽太郎くんに、「バカたれが!」という脚本にないセリフを引き出しました。貴重な現場を見ました。

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紙一重の空気。

今回も7月下旬に行われたyhs公演直後の参加となり、かなりのハードスケジュール。
負担をかけてしまったかもしれません。

それでも、そんな苦労を微塵も感じさせず、ソツなく乗り切ってくれました。感謝。

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そして紙一重の演技。

最後に、櫻井くんが地獄の鬼役だったら、持っててほしい拷問具はドリルです。
両手にひとつずつもありです。




ほんとは最後ですし、藤実のときのように四人芝居を書いてみたかったのですが、そんなことをしていたら絶対今年中に終わりません。

そこで彼らならこういう役が合うんじゃないかという当て書きノートを作ってみました。
脳内配役会議です。

彼らがこれらの役を演じるならぜひ見てみたいということを箇条書きにしました。

遠藤はたぶん書ききれないので、これを読んでいる脚本家の方がいらしたら、あえて乗っかってみるなり、新規開拓の参考にするなりしてもらえれば幸いです。

あと、あくまで相性のよさそうな「役」の話です。本人がそういう人だと思っているわけではないので悪しからず。


■村上義典くん

・教育実習生役…教科は五教科どれでも。一見頼りなく、生徒より先に貧血で倒れたりする。涙もろく行事で真っ先に泣く。最初は不良グループになめられているが最後に意地を見せて和解する。

・主夫役…妻がバリバリ働いている。娘がいる。得意料理はフレンチトースト。婿入り。妻が仕事で迷っているときに「君の好きなようにしたらいい。家のことはまかせて」と背中を押す。

・漫才師役…ナイナイ矢部、オードリー若林の系譜でソフトなツッコミを得意とする。プライベートでは金まわりが悪く、金貸しに頭があがらない。

・お化け屋敷で散々怖がった勢いで幽霊役の人を殴って警察に連行される人役。

・チンピラ役…スカジャン。主人公に威勢よく突っかかっていき、あっさり負ける。基本的に虐げられているが、最後に逆上して兄貴分を刺す。

・パティシエ役…やりすぎて怒られるタイプ。

・ドジっ子マジシャン役…鳩アレルギーでハンカチが手放せない。

おかしい。村上くんの笑顔が思い描けない…。

全体的に振り回されがちで、感情のタガがはずれると何をするかわからない役という感じでしょうか。


■山崎孝宏くん

・教師役…学年主任。専門は理科か数学。もうちょっと年齢を重ねたら教頭先生役ができそう。

・お料理教室の先生役…「今日は和食に挑戦してみましょう!」とか言って主婦層の生徒たちをまとめようとするが、結局振り回される感じ。

・デコトラの運転手…一昔前のイメージで、グンゼのシャツに鉢巻。お守りに紐をつけて首からぶらさげている。新入りを助手席に乗せていい話風に説教するのが好き。実は寂しがり屋で田舎に妻と子供がいる。おでん屋台、焼き鳥屋のおっちゃんでも可。

・主夫役…妻がバリバリ働いている。娘がいる。得意料理は麺類(粉をこねるところから)。犬を飼っている。妻が何かを相談したいときでも、明るく振舞う彼を見て「彼もがんばってるんだから私ももう少しがんばろう」と胸にとどめる感じの関係。

・草野球チームの二番バッター役…商店街チームで普段はお豆腐を作っている。構えが独特。野次がうまい。

・応援団OB役…バンカラな空気が合いそう。

・野良ネコ役…ネコ世界でのアウトロー的な存在。家ネコたちには恐れられているが根はやさしい。

あちこちで言っていますが、山崎くんは八嶋智人さんがやっているような役全般が似合うような気がしています。

また、「おちくぼ」のときで証明されているように、ステレオタイプの役をきっちり魅力的にする職人的な技術も持っています。


■塚本雄介くん

・熱烈な信仰心を持つ信者役…人を殺すくらいなら平気でできるレベルの信者。

・手品師役…専門はクローズアップマジック。

・悪いおじさん役…育ちのいい甥に、悪い遊びや世の中の真実を教えてしまう、かわいい役。アル中気味。

・お笑い芸人役…ネタはそんなにおもしろくないが、政治活動に異常にくわしかったり、小説を書かせたら賞をとったりする。演説芸。ピンで活躍する。

・カフェ店員役…シュールなラテアートで客の苦笑いを誘う。

・ソムリエ役…こだわりが強い。自信家でレストランの中でも一匹狼的な存在。パーティジョークが得意で、トラブルで料理が遅れてしまったときに、進んで客前に出て場つなぎをする。それでも間に合わず涙目になったりする。音痴。同じ職場に伝説のギャルソンと天才女性シェフがいる。なつかしい。

・スタンド使い役または卍解使いの役…テニプリまでならアリ。悪魔の実は食べてない。忍術も使えない。

・サンタクロース役…サンタ業界のアウトロー的な存在。悪い子担当。

胡散臭い感じの役が多すぎますね…。

一応、実際の塚本くんは真面目で人当たりのいい好青年であることを書いておきます。


■櫻井保一くん

すでに所属のyhsでいろいろ演じているし、本文のほうが長くなってしまったので、ひとつだけ。

・棋士の橋本崇載さん役(ノンフィクション)。

大事な対局で素人がするようなミスで反則負けし、ネットやらなにやらで笑われ、たたかれ、本人もネタにするコミカルなシーンから始まる。
時間が戻り対局一週間くらい前。
問題の反則負けの瞬間まで、いかにその対局への思い入れをこめて取り組んでいたか、ちゃんと見せてから、あらためてオープニングのシーンに戻る。
まったく同じシーンなのにコミカルどころか共感して泣けてきてしまう…というプランの一人芝居。
タイトルは『人生に二歩あれば』。
自分のスキルじゃ書ききれないので誰か書いて上演してくれないかしら。見たい。

……

というわけで、なんと4ヶ月かけて役者さんのお話をしました。

ほんとはもっと作品について書いたほうがよかったのかもしれませんが、本公演の見所はやはり「演技」だったので、これはこれでアリかなと思います。

ここまでしっかり役者さんのことが書けるのはプロデュース公演ならではですし。
(たとえば、劇団の団長が所属役者をほめまくる記事を書いたら微妙ですよね)

これで終わると、ちょっと締りが悪いのでもう一回くらい更新したいと思います。
よろしければおつきあいくださいね。


前回記事のクロスワードの答え

posted by エンプロ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | つれづれ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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